Preziを使う使わないに関わらず、良いプレゼンテーション(聞き手が飽きない)を作るためには、ツールの使い方以上に、プレゼン内容を面白いものにする必要があります。先日のプレゼンテーションアカデミーでの講義のおさらいも含めて、もう一度メモを書いておきます。基本は「Preziではじめるズーミングプレゼンテーション」の第5章以降を参考にしてください。
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起承転結をプロットする
まずはPreziのキャンバス上に、起ー承ー転ー結をプロットしましょう。
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たくさんアイデアを出す
プレゼンテーションの基本は「Before-After」です。Beforeの部分が「承」でAfterの部分が「転」になります。プレゼンしようとしている商品やサービスがなかった時はどのように不便だったか、面倒だったか、苦労していたか、とりあえず思いつくままにキーワードを「承」の周辺に書き出してみましょう。さらに、当社の商品やサービスを使うことで、あるいはお店に来ることで、どのようなメリットがあるのか、同じように思いついたキーワードを「転」の周辺に書き出してみましょう。
ねじ巻きをドライバーでやっているところに、電動ドライバーを提案するようなわかりやすい Before-After がない場合であっても、少し視野を広げることで、うまく Before-After 演出することが可能です。- Before –> 手で面倒なねじ巻き After –> 当社の電動ドライバー
「時間が掛かる」「手が痛くなる」「イライラする」「集中力が低下する」「仕事が嫌になる」「怪我をする」「すぐになくす」・・・etc, etc
これらのキーワードとそれをうまく比喩するような写真や統計データを見つけてきましょう。写真の探し方については Prezi Book の5.2(p158~)を参照してください。
これらの苦労や面倒がスカッと解消できることを After つまり「転」のところに書き出しますが、ここではあまりしつこく書いてはいけません。代わりに「事例」を入れることが重要です。実際に使っている人の写真、現場の写真、現場からの喜びの声的なものを入れましょう。
- Before –> 美味いお酒のない人生 After –> うちのバー
「日本の歴史=酒の歴史」「米と酒」「日本人と酒」「ぶどう酒と日本酒」「麦よりも米」「水と米」「日本の風土と酒」「四季と酒」「魚と酒」「祭りと酒」「神事と酒」・・・etc, etc
「日本酒は悪酔いするから飲まない」という人が多いけれど、少し舐めてみたくなるような、そんなキーワードをまずは書き出してみましょう。その上で、実際に世界に自慢できるような情報を、調べつつ、深掘りしていきます。今度は日本の風光明媚な自然の写真や文化的な写真があると良いです。そして After として、うちにはそんな世界に誇れる日本酒がたくさん準備されていますよ、と、さらりと言ってのけましょう。Afterはさらりが良いです。しつこくアピールしてはいけません。
- Before –> お花のない生活 After –> うちの花屋
「彩りのある生活」「四季を感じる」「植物のパワー」「花は家族を明るくする」「花は心を元気にする」「花は感性を磨く」「花でお客様をもてなす」「日本文化と花」「おしゃれの基本は花」「心が豊かな人は花好き」「子育てと花」「記念日と花」・・・etc, etc
「生花は枯れちゃうから面倒」という人が多いけれど、少し飾ってみたくなるような、そんなキーワードを書き出してみましょう。同時に花が持つ力や、それにまつわるエピソード、また統計的なデータを集めましょう。さらに色とりどりの花の写真を使って、ロジカルに、エモーショナルに、聞き手に花の楽しさを伝えましょう。「花」ではなく、「花のあるライフスタイル」を提案するのです。
- Before –> 限られた地球の資源 After –> 当社のエコ技術
我が社はスクラップ回収業者、華やかな売り物はありません。そんなことはありません。スクラップを回収することで、どのように地域や社会に貢献しているでしょうか。もし、スクラップ回収業者が世の中に存在しなかったらどうなるでしょうか。もし、自分たちの存在がなければ、この世は一体どうなってしまうのか、そこんところを徹底的に考えましょう。プレゼンテーションを作る、とは、自らと対峙し、自らの存在意義、すなわちレゾンデートルを確かめる、という作業に他ならないのです。プレゼンテーション作りで行き詰まったら、創業理念やビジョンを読み直してみましょう。そこから何かが見えてくるかもしれません。見えてこないかもしれません。
- Before –> 手で面倒なねじ巻き After –> 当社の電動ドライバー
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シンプルにする
キーワードをたくさん書き出すうちに、あれもこれも入れておきたいなと思うのが人情ですが、たくさんの要素を詰め込むと逆に、ひとつひとつの内容が薄くなってしまうので、勇気を出して切り捨てる必要があります。シンプルにするというのは簡単じゃありません。実はとても難しいことです。
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アイスブレイクを考える
アイスブレイクを作成する方法はプレゼンテーションアカデミーで話をした通りです。Prezi Bookの5.5(p119~)にもアイスブレイクの作り方は詳しく書いてありますので参照してください。アイスブレイクで重要なポイントはスムーズに「承」へとつながるような導入、つまり「起」を考えることです。最も簡単なのは、ちょっとしたうんちく、歴史、エピソードを話しつつ上記の Before のストーリーに入っていくことです。と言っても、そのアイスブレイクのネタがなかなか思いつかないという点が難しいところですが、慣れてくると意外に簡単です。先ほどの例で言えば、次のような感じでアイスブレイクネタが作れそうです。もちろん、この時点では中身は空っぽで、とても適当です。しかし、ちょっと調べてみるとちゃんとそれっぽいネタが存在しているものです。調べるという作業を通じて、自分も知らなかったような面白い情報がたくさん出てくるはずです。
- Before –> 手で面倒なねじ巻き After –> 当社の電動ドライバー
- 人類の進化、道具の進化
- 江戸の文化を支えた建築技術
- 未来の工具
- Before –> 美味いお酒のない人生 After –> うちのバー
- 人類の進化、酒の進化
- 江戸の文化を支えた酒造技術
- 未来のお酒
- Before –> お花のない生活 After –> うちの花屋
- 人類の進化、装飾の進化
- 江戸の文化を支えた栽培技術
- 未来のお花
- Before –> 限られた地球の資源 After –> 当社のエコ技術
- 人類の進化、資源活用技術の進化
- 江戸の文化を支えたエコ技術
- 未来のエコ
- Before –> 手で面倒なねじ巻き After –> 当社の電動ドライバー
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オファリング
アイスブレイクネタ、Before、After、すなわち「起承転」でメリハリをつけることで聞き手を飽きさせないプレゼンテーションを作ることができます。では、最後の締めはどうすれば良いでしょうか。少なくともお店のPRやビジネスでのプレゼンテーションの場合、それを見た後、何らかの行動に移してもらってはじめて、そのプレゼンは成功と言えるでしょう。
と言うことは、最後に聞き手を行動に至らせる「ひと押し」があると良いのは間違いありません。ビジネスの場合、これはオファリングと言われます。聞き手は、プレゼンテーションを聞き終わった後、一般的にはこんな感情を持つものです。
- 良いのはわかった。でも、まぁ今はいいや。
- 良いのは分かった。でも、お高いんでしょう?
- 良いのは分かった。でも、難しいんでしょう?
- 良いのは分かった。でも、面倒くさいんでしょう?
- 良いのは分かった。他の業者の話しも聞いてみよう
オファリングとはすなわち、これらに明確な回答を準備することです。
- なぜ今買うのか
- なぜ当社から買うべきなのか
- なぜこの価格で買うべきなのか
妥当な範囲の譲歩で提供可能な取引条件を提示すること
これがオファリングです。プレゼンテーションの最後「結」のところではじめて「特典」や「キャンペーン」「限定」「割引」の話をするわけです。これらの取引条件、つまりオプションは、ゲームを左右する強力なカードです。間違っても最初からカードの内容をオープンにしてはいけません。このあたりは「今すぐできる戦略思考の教科書」の方に書いたような覚えがあるので、気になる方はご参考ください。
Preziの良いところは、先にプレゼンテーションに詰め込む要素を真っ白でだだっ広いキャンバスの上に、デザインやレイアウトを考えることなく、有象無象に吐き出せるところにあります。そうやって、まずは大きく「起承転結」に分けて、要素を洗い出してから、少しずつ配置や大きさなどのレイアウトをデザインできることで、プレゼンテーションのストーリー作りと、プレゼンテーションのデザインやレイアウトの作業を分離できるわけです。そして最後にパスをつけることで、プレゼンテーションの流れを自由にコントロールすることができます。(戦略的なレイアウトやパスの作り方については Prezi Book 5.7(p132~)を参照してください)
慣れるに従って、自分で独自にプレゼンテーションを作るコツが身についてくると思いますが、最初はいきなり白いキャンバスが出てきて、一体全体何から書き始めれば良いのかよくわらないということになると思います。そのような時には、ぜひこのエントリで書いた内容やPrezi Bookを見直してみてくださいね!